浮世絵師・葛飾北斎の「もしもの店」。
波の描き方、いつも参考にさせてもらっています。東海道の仕事の合間に、つい買い足してしまう。ライバルですが、良いものは良い。
弟と二人で集めています。日本の芸術家は、まるで呼吸をするように自然を描く。私の部屋の壁は、もうあなたの版画でいっぱいです。
大波の一枚を長屋に貼ったら、来る客来る客みんな欲しがる。星ひとつ引いたのは、うちのかかあが赤富士の再入荷を三月待ってるからだ。
齢九十。名を三十回変え、引っ越しは九十三回。絵を描くことのほかは、何ひとつ続いたためしがない。
七十のときにようやく、鳥やけものの骨格が少しわかってきた。九十でその奥義を極め、百歳で神妙の域に達するつもりでいる。だから、店を始めるのに遅すぎるということはない。
版元に任せていた売り買いを、この歳になって自分の手に取り戻した。絵を描く者が、絵の届け先を自分で決める。ただそれだけのことが、こんなに愉快だとは思わなかった。